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50代の坐骨神経痛、前屈・後屈でヘルニアと狭窄症を見分ける

2026年9月16日
50代の坐骨神経痛、前屈・後屈でヘルニアと狭窄症を見分ける

靴下を履く前かがみで走る痛み、その手がかりは動きの中にある


右のお尻から太ももへ帯のように広がるしびれが半年続き、前かがみの動作がつらくなってきた。そんなとき、前屈と後屈のどちらで楽になるかは原因を絞る手がかりになります。この記事では椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症の症状の出方の違い、年代の傾向、そして整形外科で確認できることを整理します。


この記事の要点まとめ


  • 前屈で強まるならヘルニア、後屈や歩行で悪化なら狭窄症の手がかりになります。
  • 梨状筋症候群など別の要因もあるため、日々の動作変化の記録が診察に役立ちます。
  • 力の入りにくさや排尿の変化がある際は、整形外科での速やかな相談が望まれます。

お尻から太もものしびれ、坐骨神経痛の症状の広がり方


しびれ・痛みが出やすい部位と片側に偏る特徴


坐骨神経は腰から骨盤の奥を抜け、お尻、太ももの裏、ふくらはぎを通って足先まで伸びる長い神経です。そのため症状も一点にとどまらず、経路に沿って帯のように広がるのが特徴。腰の痛みは軽いのに、お尻から脚の症状ばかりが目立つ方もいます。


もう一つの手がかりが左右差です。多くは片側に偏り、「右だけ」「左だけ」という訴えになりやすい。座り続けた後、歩き始め、咳やくしゃみの瞬間に脚へ響くといった、きっかけのある痛み方も記録しておくと診察で役立ちます。


40〜50代の女性に症状が出やすいとされる理由


この年代で相談が増える背景には、いくつかの要因が重なります。椎間板は加齢に伴い水分が減って弾力が落ち、腰椎を支える腹部や背中の筋力も低下しがち。さらに閉経前後のホルモン変化は骨の代謝にも関わります。


加えて生活動作の影響も無視できません。介護で人を支える、洗面や掃除で中腰を繰り返す、事務作業で長時間座る——いずれも腰への負担が積み重なる姿勢です。あくまで傾向ですが、こうした条件がそろう時期にあたる、という理解でよいでしょう。


前かがみと後ろ反らし、動きによる症状変化でヘルニアと狭窄症を見分ける

前かがみと後ろ反らし、動きによる症状変化でヘルニアと狭窄症を見分ける

前かがみで痛みが強まる場合に考えられる椎間板ヘルニア


上体を前へ倒すと、椎間板の後ろ側にかかる圧が高まります。飛び出した椎間板が神経の根元に触れている状態だと、この動きで症状が強まりやすい。靴下を履く、洗面台で顔を洗う、床の物を拾うといった前屈動作でお尻から脚へ痛みが走るなら、腰椎椎間板ヘルニアが候補に挙がります。長く座っているとつらく、立ち上がって少し歩くと和らぐ、という訴えも少なくありません。


後ろに反らす・歩き続けると辛くなる脊柱管狭窄症の特徴


一方、神経の通り道そのものが狭くなるのが腰部脊柱管狭窄症です。腰を後ろへ反らすと通り道はさらに狭まるため、洗濯物を干す、上の棚へ手を伸ばすといった動作で脚のしびれが増すことがあります。


特徴的なのは歩行時の変化で、数分歩くと脚が重く張ってきて、前かがみで少し休むとまた歩ける——間欠跛行と呼ばれる経過。自転車なら平気、スーパーのカートを押すと楽、という話が出れば、この可能性を念頭に置きます。


発症しやすい年代の違いから考える手がかり


年代は補助的な目安になります。椎間板ヘルニアは20〜40代を中心に中年層まで幅広く、脊柱管狭窄症は50代以降に増えていく傾向。ただ50代前半はちょうど両者が重なる時期で、椎間板の変化と通り道の狭さが併存することもあります。「年齢だから狭窄症」と決めつけず、動作での変化とあわせて考える姿勢が現実的です。


自己判断の限界と、見落とされやすい坐骨神経痛の原因


足を挙げて確認する動作テストで分かることと限界


診察では、仰向けで膝を伸ばしたまま脚を持ち上げる下肢伸展挙上テスト(SLRテスト)がよく用いられます。挙げる途中で坐骨神経の経路に沿った痛みが再現されるかを確認する方法です。ただし、このテストは症状を拾い上げる力は比較的高い一方、原因を言い当てる力は高くないと報告されています3。つまり陽性でも「どこで神経が圧迫されているか」までは分からないわけです。自宅で強く反復するのは控え、気づいた変化をメモに残すだけで十分です。


お尻の奥の筋肉が原因となる梨状筋症候群という選択肢


原因が腰ではなく、お尻の奥にある場合もあります。梨状筋症候群では、臀部の痛み、座位での悪化、お尻の奥を押したときの痛み、この筋肉が引き伸ばされる動作での痛みという4つの所見が繰り返し報告されてきました2。近年はこれを含めて、臀部の深い層で坐骨神経が圧迫される状態を深臀部症候群としてまとめる考え方も示されています1。腰の画像所見だけでは説明がつきにくいとき、候補として検討される領域です。


前屈・後屈の判定だけで決めつけることのリスク


実際には「どちらもつらい」「日によって違う」という方が珍しくありません。椎間板と脊柱管の変化が併存することもあれば、脚の血流の問題や糖尿病に伴う神経の障害など、腰以外の要因が似た症状を作ることもあります。前屈・後屈の反応は、原因を確定する材料ではなく、医師に状況を伝えるための観察記録として活かすのが現実的な使い方です。


整形外科での検査の進み方と、受診を先延ばしにしない目安

整形外科での検査の進み方と、受診を先延ばしにしない目安

レントゲンとMRIでそれぞれ確認できること


レントゲンで分かるのは骨の情報です。腰椎の並び、椎骨のずれ、椎間の高さ、側弯の有無などを短時間で確認できます。ただし神経そのものや椎間板は写らないため、圧迫の状態を詳しく確認する際にはMRI検査が用いられることがあります。1.5テスラのMRI装置を備えた整形外科であれば、診察と同じ日に撮影できる場合もあります。臀部の筋肉や神経周囲の評価には超音波(エコー)検査が使われることもあり、年代的に骨密度測定(DEXA)を併せて確認するケースも見られます。


MRI検査の費用は保険診療で3割負担の場合、医療機関により幅がありますが、数千円〜1万円程度が目安とされることがあります。なお、記載した金額は一般的な相場であり当院の費用ではありません。実際の費用は検査内容や医療機関により異なります。


早めの受診が望ましいサイン


次のような変化があるときは、様子を見るより当日のうちに医療機関へ相談する判断が望まれます。


  • 排尿・排便がしづらい、尿がもれる、股の周囲の感覚が鈍い
  • 足首やつま先が持ち上がらず、つまずきやすい
  • 症状が両脚に広がってきた、安静時でも強い痛みが続く
  • 発熱や体重の減少を伴う

愛知県内で仕事や介護と両立しながら通院先を選ぶ視点


仕事と親御さんの通院付き添いを抱えていると、通院の回数そのものが負担になります。画像検査が院内で完結するか、受付時間が勤務や送迎の合間に収まるか、リハビリの時間帯に選択肢があるか。愛知県内でも生活動線に合うかどうかで通いやすさは変わります。


まずは1週間、「前屈と後屈のどちらでつらいか」「何分歩くと休みたくなるか」を書き留めてみてください。その一枚が、診察室で原因を絞り込む出発点になります。


よくある質問


Q. 坐骨神経痛かどうか確かめる方法はありますか?

A. お尻から太もも裏、ふくらはぎ、足先へと経路に沿って症状が広がるか、片側に偏っているかが一つの手がかりです。医療機関では仰向けで脚を伸ばしたまま挙げるSLRテストなどで神経の経路に沿った痛みが再現されるかを確認します。ただし所見だけで原因部位を特定することは難しく、画像検査と組み合わせた評価が行われます3


Q. 坐骨神経痛と間違えやすい病気は何ですか?

A. 脚の血流が低下する閉塞性動脈硬化症、糖尿病に伴う神経の障害、股関節や骨盤内の疾患などが挙げられます。お尻の奥で神経が圧迫される梨状筋症候群や深臀部症候群も、腰が原因の症状と区別しにくいことが知られています12。歩行との関係や痛みの出る時間帯を伝えると、鑑別の材料になります。


Q. 坐骨神経痛になりやすい人の特徴はありますか?

A. 長時間座る仕事、中腰や持ち上げ動作の繰り返し、腰やお腹周りの筋力低下、体重の増加などが腰への負担として重なりやすい条件です。加齢に伴う椎間板や脊柱管の変化も背景になります。あくまで傾向であり、該当しても症状が出るとは限りません。


Q. 痛みのピークはどのくらい続くものですか?

A. 経過は原因や個人差によって幅があり、一律の期間は示せません。数週間で落ち着く方もいれば、動作のたびに強まる状態が続く方もいます。夜間も眠れないほどの痛み、脚の力が入りにくい、排尿排便に変化があるといった場合は、期間を待たずに相談してください。


Q. 前屈・後屈の自己チェックは毎日やったほうがよいですか?

A. 痛みを強く再現させる必要はありません。日常動作の中で「どの姿勢がつらかったか」を気づいたときに書き留める程度で十分です。無理に反復して症状を確かめる方法は控えてください。


参考文献


1. Park JW, Lee YK, Lee YJ, et al. Deep gluteal syndrome as a cause of posterior hip pain and sciatica-like pain. The Bone & Joint Journal. 2020. PMID: 32349600 / DOI: 10.1302/0301-620X.102B5.BJJ-2019-1212.R1

2. Hopayian K, Danielyan A. Four symptoms define the piriformis syndrome: an updated systematic review of its clinical features. European Journal of Orthopaedic Surgery & Traumatology. 2018. PMID: 28836092 / DOI: 10.1007/s00590-017-2031-8

3. Scaia V, Baxter D, Cook C. The pain provocation-based straight leg raise test for diagnosis of lumbar disc herniation, lumbar radiculopathy, and/or sciatica: a systematic review of clinical utility. Journal of Back and Musculoskeletal Rehabilitation. 2012. PMID: 23220802 / DOI: 10.3233/BMR-2012-0339


渡邊 裕規

医師


わたなべ整形外科運動器クリニック

院長

渡邊 裕規

▶ 監修者プロフィール

経歴
1999年 富山大学医学部卒業 富山大学附属病院整形外科 研修医
2000年 富山労災病院 整形外科 医員
2002年 長野県厚生連 長野松代総合病院 整形外科 医員
2003年 愛知医科大学 分子医科学研究所 研究員
2007年 富山大学大学院医学系研究科修了(医学博士) 
2009年 黒部市民病院 整形外科 医員
2010年 富山労災病院 整形外科 副部長
2012年 はちや整形外科病院 医局長、関節スポーツ部門担当および人工関節チーフドクター
2014年 豪シドニー臨床留学 (フェロー6ヵ月間)
2018年 名古屋市名東区にてわたなべ整形外科運動器クリニック開院
2021年 医療法人WOMSC設立
資格・所属学会
【学位・資格】
医学博士
日本整形外科学会認定
整形外科専門医 リウマチ医
日本リハビリテーション医学会
認定臨床医
日本体育協会 スポーツドクター
【所属学会】
日本整形外科学会
日本人工関節学会
日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)
日本リハビリテーション医学会
日本股関節学会
日本リウマチ学会
東海関節外科研究会 世話人