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変形性膝関節症を放置すると進行はどう進む?段階ごとの症状と治療法

2026年10月19日
変形性膝関節症を放置すると進行はどう進む?段階ごとの症状と治療法

膝の違和感や痛みをそのままにしたときに知っておきたい見通し

変形性膝関節症をそのままにすると、はじめは動き始めだけだった痛みが、正座や階段の上り下りのつらさへと変わることがあります。さらに進むと、じっとしていても痛み、膝が伸びきらず歩きにくくなることがあります1。ただ、進行の速さや痛みの強さには個人差があり、自覚症状だけで関節の状態を決めることはできません。この記事では、段階ごとの症状と検査の役割、運動療法や薬、注射、手術といった治療の位置づけと選び方を整理します。


この記事の要点まとめ


  • はじめは動きだしのときの違和感から、階段や歩くときの痛み、じっとしていても痛む状態へと移ることがあります。進み方は人によってちがいます。
  • 痛みと画像での変化は一致しないことがあり、診察や画像検査、暮らしへの影響をあわせてみます。
  • 運動療法を土台に薬や注射、装具を取り入れ、暮らしへの支障に合わせて手術も含めて医師と方針を相談します。

変形性膝関節症を放置するとどう進行する?段階ごとの症状と、症状だけで決められない理由

変形性膝関節症を放置するとどう進行する?段階ごとの症状と、症状だけで決められない理由

変形性膝関節症(膝OA)は、進行の段階によって痛みの出方や暮らしへの影響が変わります。一方で痛みの強さと関節の変形の程度は一致しないこともあり、診察と画像検査を組み合わせて評価します。


初期・中期・進行期で変わる膝の症状と暮らしへの影響


症状は初期・中期・進行期の3つの段階に分けて考えられます。関節のクッションである軟骨がすり減り、骨と骨のすき間(関節裂隙)が狭くなったり、骨の端にトゲのような出っ張り(骨棘)ができたりする変化が背景にあります。


段階主な膝の症状関節内の変化と暮らしへの影響
初期朝の動き始めのこわばり、立ち上がりや歩き始めの痛み休むと痛みが引きやすいが、軟骨の摩耗が始まっている状態
中期階段の上り下りや正座のしづらさ、膝の腫れ(水がたまる)関節裂隙が狭まり骨棘が目立つ。長時間の立ち仕事や外出が負担になる
進行期(末期)安静時や夜間の痛み、膝が伸びきらない、歩行困難軟骨が大きく減り、O脚やX脚などの外見上の変形が目立つ

膝の痛みをかばって外出や歩く機会を減らすと、太ももの筋力が低下します。関節を支える力が弱まるとさらに膝への負担が増え、痛みが強まる悪循環から生活の質(QOL)の低下につながることがあります。


痛みが軽くなった=進行が止まった、とは限らないという誤解


湿布や安静で痛みが一時的に和らいでも、関節内の変化が止まったとは判断できません。膝の痛みには天候やその日の活動量、関節内の炎症の波が影響するためです。


進み方の速さには、年齢や体重、O脚の度合い、ふだんの動作など、いくつもの要素が関わり、人によって大きくちがいます。そのため、今の痛みの強さだけで、この先どう進むかを決めることはできません。以前より階段で足が止まるようになったなど、暮らしの変化を目安に、膝の状態を確かめ直すことが大切です。


診察・レントゲン・MRIで確かめることと、検査を組み合わせる理由


進行度は、画像所見・痛みの強さ・歩行能力・日常生活への影響を組み合わせて判断します。問診と触診では、痛む動作や関節の腫れ、曲げ伸ばしできる範囲(可動域)、歩き方を確認します。


レントゲン検査では、関節裂隙の狭まりや骨棘、変形の程度を調べます。股関節から足関節までの下肢全体を撮影する長尺撮影を用いると、O脚など脚全体のバランス(アライメント)も評価できます。


また、レントゲンでは写りにくい軟骨や半月板、骨の内部の状態を詳しく調べるには1.5テスラMRIが用いられます。関節の水(関節液)があるかを確かめたり、注射の位置を確認したりするときには、超音波診断装置(エコー検査)が活用されます。


ポイント

痛みの強さと関節の変形は必ずしも比例しないため、現在の関節の状態と生活上の困りごとを照らし合わせて方針を考えます。


急な腫れ・熱感・体重をかけられないときは次の受診を待たない


様子を見ている期間であっても、次のような変化が出たときは予定を早めて整形外科を受診してください。


  • 膝が急に大きく腫れ上がり、熱を持っている
  • 膝の痛みとともに全身の発熱がある
  • 急に痛みが増して片足に体重をかけられない
  • 膝の中で何かが引っかかったように動かなくなる

これらは、変形性膝関節症のふだんの経過とは違う関節の炎症や、半月板の引っかかり、骨の小さな傷などが関わっていることがあります。早めに確かめてもらいましょう。


変形性膝関節症の治療の選び方:運動・薬・注射・手術の位置づけと仕事への影響

治療は、失われた機能の回復と痛みを和らげることを目的に、運動療法などの保存療法を土台として進めます。仕事や家族の支援など、普段の暮らしを続けながら無理のない方法を選んでいきます。


散歩は控えるべき?動かす・休むの線引きと負荷の調整方法


「動くと軟骨がさらにすり減るのではないか」と心配して散歩を控える方は少なくありません。しかし、散歩などの適度な運動がそのまま膝の悪化につながるとは言い切れません。運動の負荷や膝の状態に応じた判断が求められます。


運動を続けるか休むかの線引きは、「運動した翌朝に痛みや腫れが残らないか」がひとつの目安です。膝に熱感や強い腫れがあるときは無理な歩行を控え、落ち着いてから太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛える筋力トレーニングや、関節の動く範囲を保つストレッチを始めます。理学療法士などのスタッフが直接指導し、筋力を継続的に測りながら負荷を調整していくと、自分のペースで続けやすくなります。


薬・ヒアルロン酸注射・サポーターで期待できることと限界


痛み止めの飲み薬や湿布などの外用薬、関節内へのヒアルロン酸注射、装具・サポーターは、痛みを和らげて日常生活や運動療法を続けやすくするための手段です。ただし、これらはすり減った軟骨そのものを元の厚さに戻す治療ではありません。


痛みが一時的に落ち着いている間に、筋力維持や動作の工夫を取り入れていきます。症状が変わらないまま注射だけで漫然と治療を引き延ばすと、関節の変形や筋力低下が進み、結果的に大きな手術が必要になることがあるため、定期的に治療の手応えを見直します。


手術を考える目安と、時期を逸しないための判断


手術はあくまで最終手段です。保存療法を続けても安静時の痛みが強い場合や、歩行・立ち仕事・家事への支障が大きく日常生活が制限される場合に、骨切り術や人工膝関節置換術などの手術を検討することがあります。


なお、保存療法と手術の間で、公的医療保険が使えない自由診療として、ご自身の血液や組織から作った成分を関節に注射する治療が紹介されることがあります。治療の内容や期間、回数、費用は方法によってちがいます。採血から注射まで同日〜数週間(1〜数回)の方法では1回あたり数万〜数十万円程度、組織をとって培養する方法では1〜数か月(1〜数回)で数十万〜百数十万円程度とされることがあります。


これらは一般的な相場であり当院の費用ではありません。当院の費用は診察のうえでご案内します。受けるかどうかは、期待できることと分かっていないことを、医師と確かめてから決めましょう。


また、注射に伴う痛みや腫れ、熱感、感染症などのリスクにも気をつける必要があります。こうした治療は、国の承認を受けていないもの、または承認とは別の目的での使い方です。材料は、国内の販売代理店などから仕入れた器具を使って院内で作る方法、外部の施設に作ってもらう方法、医師が個人輸入する方法があります。


保険診療で受けられる治療としては、この記事で触れた運動療法や薬、ヒアルロン酸注射、手術などもあります。海外でも変形性膝関節症の治療として認められていないものが多く、まだ知られていない重いリスクがあるかもしれません。重い副作用が出ても、国の医薬品副作用被害救済制度は使えません。


「手術をするか」だけでなく「いつ相談するか」という時期を逸しないためにも、関節外科の経験を持つ医師と、保存療法を続けることによる不利益も含めて話し合うことが大切です。


ポイント

薬や注射は痛みを抑えて動く力を保つための方法であり、経過を見ながら治療方針を見直すタイミングを医師と共有しておきましょう。


愛知県名古屋市名東区で仕事や家族の付き添いと両立しながら相談する


立ち仕事やご家族の通院・買い物の付き添いを続けながら治療を受けるには、受診時に「週に何日・何時間ほど立つか」「階段を使う場面」「通院できる曜日」を医師へ具体的に伝えてください。通院頻度や治療期間の目安、変化が乏しい場合に方針を見直す時期を事前に共有しておくと、仕事の予定も立てやすくなります。


整形外科での診察・検査・リハビリテーションは基本的に公的医療保険が適用されますが、初診でレントゲンのみの場合とMRI検査を含める場合では自己負担額が異なり、3割負担で数千円〜1万円前後と幅があります。記載した金額は一般的な相場であり当院の費用ではありません。当院の費用は診察のうえでご案内します。自宅で不自由なく日常生活を送るための運動器リハビリテーションや通所リハビリテーションの活用も含め、まずは現在の膝の評価から相談を始めてみてください。


よくある質問


Q. 膝の変形性関節症の原因と「一次性」の意味は何ですか?


A. 加齢に伴う軟骨の摩耗、肥満、O脚などの脚の形、太ももの筋力低下、立ち仕事などによる膝への負担が重なって起こります。遺伝や環境などが関わり、はっきりした原因が特定しにくいものを「一次性(原発性)変形性膝関節症」といい、全体の9割以上を占めます2。一方、けがなど、はっきりした原因に続いて起こるものは「二次性変形性膝関節症」と呼ばれます。


Q. 膝OAとは何の略ですか?


A. 「Knee Osteoarthritis(ニー・オステオアースライティス)」の略で、日本語では変形性膝関節症を指します。医療機関のカルテや説明書などで使われることがある表記です。


Q. 立ち仕事を休まずに治療を続けることはできますか?


A. 膝の腫れや痛みの程度、仕事での作業内容(重い荷物を持つか、階段を使うかなど)によって異なります。サポーターの着用や薬、注射で痛みを調整しながら勤務を続けられる場合もありますが、膝の状態によっては作業量の調整が必要になることもあるため、仕事内容を医師に伝えて相談してください。


Q. レントゲン検査を受けるとき、サポーターやテーピングは外しますか?


A. 金具やプラスチックの支柱が入っているサポーターは画像に写り込むため、撮影時に外していただきます。テーピングは画像に写りにくいため貼ったまま撮影することもありますが、膝の腫れや皮膚の状態を確かめるためにはがしていただく場合もあります。着脱しやすい服装やサポーターで受診すると検査がスムーズに進みます。


参考文献

1. 「変形性膝関節症」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる. https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/knee_osteoarthritis.html

2. 変形性膝関節症 | みんなの医療ガイド | 兵庫医科大学病院. https://www.hosp.hyo-med.ac.jp/disease_guide/detail/69

3. Timmins KA, Leech RD, Batt ME et al. Running and Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-analysis. The American journal of sports medicine. 2017. PMID: 27519678 / DOI: 10.1177/0363546516657531

4. 国立健康危機管理研究機構. 糖尿病の治療ってどんなものがあるの?. https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/040/010/01.html


渡邊 裕規

医師


わたなべ整形外科運動器クリニック

院長

渡邊 裕規

▶ 監修者プロフィール

経歴
1999年 富山大学医学部卒業 富山大学附属病院整形外科 研修医
2000年 富山労災病院 整形外科 医員
2002年 長野県厚生連 長野松代総合病院 整形外科 医員
2003年 愛知医科大学 分子医科学研究所 研究員
2007年 富山大学大学院医学系研究科修了(医学博士) 
2009年 黒部市民病院 整形外科 医員
2010年 富山労災病院 整形外科 副部長
2012年 はちや整形外科病院 医局長、関節スポーツ部門担当および人工関節チーフドクター
2014年 豪シドニー臨床留学 (フェロー6ヵ月間)
2018年 名古屋市名東区にてわたなべ整形外科運動器クリニック開院
2021年 医療法人WOMSC設立
資格・所属学会
【学位・資格】
医学博士
日本整形外科学会認定
整形外科専門医 リウマチ医
日本リハビリテーション医学会
認定臨床医
日本体育協会 スポーツドクター
【所属学会】
日本整形外科学会
日本人工関節学会
日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)
日本リハビリテーション医学会
日本股関節学会
日本リウマチ学会
東海関節外科研究会 世話人