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今の骨の状態と暮らしの予定から治療を考える
骨粗しょう症をそのままにしておくと、痛みなどがないまま背骨や股関節が折れやすくなるおそれがあります。太ももの付け根や背骨が折れると、歩くことや立ち上がりなど、毎日の動きに影響することがあります。 この記事では、腰の骨と太ももの付け根の骨をDEXAで測る検査、年齢や骨折の経験をふまえた治療の始め方、飲み薬・注射の特ちょうや歯医者にかかるときの注意点をまとめました。仕事や家族の手助けを続けながら取り組める治療と、転ばないための考え方を説明します。
この記事の要点まとめ
- 骨粗しょう症は気づきにくく、背骨や足の付け根の骨が折れることにつながる場合があります。
- DEXAで腰の骨と太ももの付け根の骨を調べ、年齢や骨が折れたことがあるか、転びやすさもふまえてどう治すかを考えます。
- 薬の飲み方や通う日、歯医者の予定を医師に伝え、筋力づくりと転ばない工夫も続けます。
骨粗しょう症の放置で骨折リスクが高まる前に、DEXAで骨の状態を確かめる

痛みがないまま背骨がつぶれることも。放置で起こる骨折と受診を急ぐ兆候
骨粗しょう症は痛みを伴わずに進行し、気づかないうちに背骨の圧迫骨折を起こしていることがあります。一度背骨が折れると、まわりの背骨にも続けて折れやすいとされています。
転倒による大腿骨近位部(股関節)の骨折は、歩行や日常動作に影響しやすくなります。こうした骨粗しょう症にともなう骨折は、閉経後の女性の生活の質を、人によって程度の差はあっても下げることが報告されています1。
昔より身長が縮んだ、背中が丸くなったと感じるときは骨の変化を確かめる目安です。尻もちや軽い転倒のあとに背中や脚の付け根が痛む場合、立ち上がれない場合は早めに整形外科を受診してください。
骨密度の結果は測定部位も確認し、腰椎と大腿骨近位部の評価へ
骨密度検査の結果を見るときは、数値とあわせてどの部位をどの方法で測ったかを確認します。超音波などによる簡易検査は、骨粗しょう症の疑いがあるかどうかを調べる目的で使われることがあります。骨の状態をくわしくみるには、X線を使うDEXA法で腰椎や大腿骨近位部を測る方法があります。
当院では骨粗しょう症の評価にDEXA法を用い、骨折が暮らしに直結しやすい腰椎と大腿骨近位部を計測しています。手首やかかとでの測定で骨粗しょう症を疑われた患者さんには、DEXA法による計測を勧めています。過去に他院や健診で検査を受けた方は、結果票で測定部位と方法を確認し、受診時にご持参ください。
治療を始めるかは骨密度の値だけでなく、年齢・骨折歴・転倒歴を合わせて判断する
薬による治療を始めるかどうかは、骨密度の数字だけでは決まりません。年齢や、これまでに背骨や股関節などが軽い力で折れたことがあるか、転んだときの様子、家族に骨折した人がいるかなどをあわせて、骨の折れやすさをみていきます。
50代以降の女性では閉経に伴い骨量が減りやすくなりますが、年代別の平均値はあくまで目安です。食事や運動の工夫だけでは骨折リスクを抑えきれないと判断される場合に、骨を守る薬の併用を検討します。ご自身の数値が持つ意味は医師と確認しましょう。
骨の評価とともに、筋力や動く機能にも目を向ける
骨がもろくなっていても、転倒しなければ股関節などの大きな骨折は起こりにくくなります。骨の強度を保つ治療と、転ばないための身体づくりを分けて考える視点が大切です。
当院のリハビリでは理学療法士やリハビリスタッフが直接指導し、可動域訓練、自重を利用した牽引、筋力訓練などを行っています。 ご高齢の方にはロコモティブシンドローム(移動機能の低下)の評価も実施しています。骨の検査と並行して、日常で無理なく取り組める運動内容を相談する材料として活用してください。
ポイント
手首やかかとの検査で指摘されたら、腰の骨と太ももの付け根の骨をDEXAで測り、骨の状態を確かめます。そのうえで、これまでの骨折や転びやすさもあわせて治療を考えます。
仕事と家族の支援を続けるために、骨を守る治療と転倒予防をどう組み合わせるか
飲み薬と注射は、効果だけでなく服用手順や通院の間隔でも選ぶ
骨粗しょう症の薬は、作用の仕組みだけでなく、ご自身の生活リズムで無理なく続けられるかどうかも選ぶ基準になります。主な種類と特徴は次の通りです。
| 薬のタイプ | 投与・服用の間隔 | 特徴と注意点 |
|---|---|---|
| 飲み薬 | 薬によって間隔が異なる | 飲む時間や、飲んだあとの過ごし方に決まりがある薬がある |
| 注射薬 | 薬によって間隔が異なる | 自宅で行う自己注射と、医療機関へ通院して受ける注射がある |
薬によって気をつけたい副作用はちがうため、どんな症状が出たら連絡すればよいかを、始める前に聞いておきましょう。骨粗しょう症の薬は、どの薬からどの薬へ切り替えていくかという順番もふまえて選ばれます2。
そのため、自分の判断で薬をやめず、続けにくいと感じたら先に医師へ相談することが大切です。治療を始める前に、期待される働きや副作用、ほかの選択肢を医師に確かめておきましょう。
抜歯の予定や通院できる曜日は、治療を始める前に医師へ伝える
骨粗しょう症の薬の中には、抜歯などの歯の治療とあわせて注意が必要なものがあります。これから抜歯やインプラントなどの予定がある方は、治療を始める前に整形外科の医師と歯科医師の双方へ伝え、情報を共有してください。
治療を始めたあとは、数か月ごとの診察や、ときどき行う骨密度の検査、血液や尿で骨の入れかわりの様子をみる検査などで、続けるかどうかを決めます。早朝の仕事やご家族の通院の付き添いがあるときは、朝起きてからの薬の飲み方が守れるか、どの曜日なら通えるかを前もって伝えて、予定を立てましょう。
運動は勧めるだけでなく、筋力の変化を確認する
転倒を防ぐには、立ち上がりや歩行を支える太ももの筋力を保つことが関わってきます。ただ運動を勧めるだけでなく、現在の筋力を把握して取り組むと継続の手がかりになります。
当院では大腿四頭筋筋力測定機器を備え、筋力を継続的に測ってトレーニングの成果を確認しています。 なお、こうした筋力の変化は移動機能をみるためのものであり、骨密度や薬の判定とは別の評価として扱います。骨の状態はDEXA検査で、足腰の筋力は筋力測定で、それぞれ確かめながら進めます。
骨折を防ぐ目的を、自宅で続けたい暮らしから考える
骨粗しょう症の治療を続ける目的は、検査の数値を保つことだけでなく、ご自身の今の暮らしを守ることにあります。外来で治療を相談されるときは、仕事を続けたい、高齢の親の買い物を手伝いたいといった「続けたい暮らし」を整理して医師へお伝えください。
なお、当院では外来とは別のサービスとして、通所リハビリも行っています。通所リハビリでは、ご本人とご家族の希望、ご本人の個性・目標・ペースに合わせ、自宅で不自由なく、できるだけご自身の力で毎日を過ごせるよう支えています。
ご自身の骨の状態が気になる方は、以前の検査結果と歯科受診の予定をお持ちのうえ、当院へご相談ください。
よくある質問
Q. テリボンなどの注射薬を途中からやめるとどうなりますか?
A. 骨をつくる働きを促す注射薬などを自己判断で中止すると、保たれていた骨密度が再び低下しやすくなります。一定の投与期間を終えたあとも、骨の吸収を抑える別の薬へ切り替えて骨密度を維持する治療計画が検討されます2。通院や自己注射の負担が気になるときは、中断する前に主治医へご相談ください。
Q. 骨粗しょう症が進行すると、どのような影響がありますか?
A. 自覚症状がないまま骨がもろくなり、わずかな衝撃や転倒で背骨(圧迫骨折)や股関節(大腿骨近位部)を骨折しやすくなります。特に股関節の骨折は歩行や立ち上がりが難しくなり、介護が必要になる要因や生活の質(QOL)の低下につながります1。また、一度骨折すると次の連鎖的な骨折が起こりやすくなる点にも注意が必要です。
Q. 50代・60代女性の骨密度の平均値はどのくらいですか?また検査費用はいくらですか?
A. 骨密度は若い世代(20〜44歳)の平均値を100%とした「YAM値(若年成人平均値)」で評価され、80%未満で要注意、70%以下が診断の目安の一つとなりますが、実際の治療判断は骨折歴なども含めて医師が行います。なお、骨密度検査の一般的な費用相場は保険適用(3割負担)で1,500〜3,000円程度、自費(自由診療)の検診では3,000〜6,000円程度です。記載した金額は一般的な相場であり当院の費用ではありません。実際の費用は検査内容や医療機関により異なりますので、診察のうえでご案内します。
参考文献
1. Gao S, Zhao Y. Quality of life in postmenopausal women with osteoporosis: a systematic review and meta-analysis. Quality of life research : an international journal of quality of life aspects of treatment, care and rehabilitation. 2023. PMID: 36383282 / DOI: 10.1007/s11136-022-03281-1
2. Nayak S, Greenspan SL. A systematic review and meta-analysis of sequential treatment strategies for osteoporosis. Osteoporosis international : a journal established as result of cooperation between the European Foundation for Osteoporosis and the National Osteoporosis Foundation of the USA. 2026. PMID: 41105226 / DOI: 10.1007/s00198-025-07717-5
2000年 富山労災病院 整形外科 医員
2002年 長野県厚生連 長野松代総合病院 整形外科 医員
2003年 愛知医科大学 分子医科学研究所 研究員
2007年 富山大学大学院医学系研究科修了(医学博士)
2009年 黒部市民病院 整形外科 医員
2010年 富山労災病院 整形外科 副部長
2012年 はちや整形外科病院 医局長、関節スポーツ部門担当および人工関節チーフドクター
2014年 豪シドニー臨床留学 (フェロー6ヵ月間)
2018年 名古屋市名東区にてわたなべ整形外科運動器クリニック開院
2021年 医療法人WOMSC設立
医学博士
日本整形外科学会認定
整形外科専門医 リウマチ医
日本リハビリテーション医学会
認定臨床医
日本体育協会 スポーツドクター
【所属学会】
日本整形外科学会
日本人工関節学会
日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)
日本リハビリテーション医学会
日本股関節学会
日本リウマチ学会
東海関節外科研究会 世話人
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