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大会前に痛みを我慢していませんか
膝や肩の痛みをテーピングでしのぎながら、プレーを続けている方は少なくありません。ただ、日常生活でも違和感が出てきたなら、それは身体からのサインかもしれません。本記事では、休むかどうかを見極めるセルフチェックの目安と、受診を検討したい症状を整形外科の視点から整理します。
この記事の要点まとめ
- 運動中は痛みを感じにくくなる場合があり、我慢が負担の蓄積につながる可能性がある
- ペインスケールや日常生活での痛みを目安に、運動継続の判断を見直す方法がある
- 関節の腫れや熱感などのサインがある場合、画像検査を含む早めの相談が選択肢となる
スポーツの痛みを我慢してプレーを続けるリスクと悪化の仕組み

「動いているうちに痛みが薄れるから平気」。そう感じている方は少なくありません。運動中は交感神経が働き、体温や血流が上がることで痛みを感じにくくなる場面があると考えられています。ただ、痛みが薄れたことと、組織への負担が減ったことは必ずしも一致しません。
軽い違和感から腱や軟骨の微細損傷へ進行するメカニズム
スポーツで生じる痛みには、一度の大きな外力ではなく、同じ動作の繰り返しによるオーバーユース(使いすぎ)が背景にあるものも多くみられます。投球やランニングで腱や付着部に小さなストレスが積み重なると、修復が追いつかず炎症が起こることがあります。
そこで練習量を落とさずに続ければ、身体は痛む部位をかばう代償動作をとりがちです。肩をかばえば肘や体幹へ、膝をかばえば股関節や反対側の脚へ。こうしてもともと痛みのなかった部位まで負担の連鎖が広がっていくことがあります。膝では大腿四頭筋腱や膝蓋腱の炎症、半月板や軟骨への負荷集中、肩では腱板や関節唇周囲へのストレスというように、特定の組織へ負担が偏っていきます。成長期のオスグッドや剥離骨折といった骨端部の問題は知られていますが、成人でも組織の疲労は同じように蓄積します。
痛みの放置がもたらす長期離脱や手術適応のリスク
炎症の初期段階であれば、練習量の調整やRICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)、動きづくりのストレッチといった対応で経過をみる範囲にとどまる場合もあります。一方で、痛みを押して負荷をかけ続け、組織の損傷が進んだ状態で受診されるケースもみられます。
その場合、運動休止の期間が数週間ではなく数か月単位に及ぶこともあり、状態によっては外科的な処置やリハビリテーションを含む長期の計画が検討されます。目前の大会のために無理を重ねた結果、翌シーズンの活動に影響が及ぶ可能性もあるという点は、判断材料として押さえておきたいところです。早い段階で負荷を調整するほうが、復帰までの見通しは立てやすくなると考えられます。
運動を休むべきかどうかの自己判断セルフチェック基準
「どこからが休むべき痛みなのか」を感覚だけで決めるのは、なかなか難しいものです。ある程度の物差しを持っておくと、チームへ相談するときにも状況を説明しやすくなります。
痛みの強さ(ペインスケール)とプレー継続の目安
痛みのない状態を0、これまで経験した中で最も強い痛みを10とする10段階のペインスケールで、今の状態を数値化してみてください。数字にすると、日ごとの変化を追いやすくなります。
- 0〜2:ウォームアップ後に薄れる程度。フォームや練習量を見直しつつ経過をみたい段階
- 3〜4:プレー中も気になるが動作は保てる。強度・回数を落とし、痛む動作を避ける調整が望まれる段階
- 5以上、またはフォームが崩れる:プレー継続の判断を慎重にしたい段階
あわせて見ておきたいのが翌朝の状態です。運動翌日の朝も痛みや腫れが残る、あるいは日を追うごとに痛む範囲が広がる場合は、回復が追いついていないサインと考えられます。テーピングや鎮痛薬で痛みを抑えたまま練習量を維持するやり方は、身体からの信号を見えにくくしてしまう点に注意が必要です。
日常生活動作(階段・デスクワーク・歩行)での痛み出現サイン
もっと分かりやすい目安が、日常生活での症状です。競技中だけの痛みと、生活の中まで出てくる痛みとでは意味合いが変わってきます。次の項目に当てはまるものがないか、確認してみてください。
- 階段の昇り降り、とくに下りで膝に痛みが出る
- デスクワークで長時間座った後、立ち上がる際に痛みやこわばりを感じる
- 車の運転や通勤の歩行時に違和感が続く
- 夜間や安静にしているときにも痛む
- 患部を反対側と見くらべると腫れぼったい、熱を持っている
スポーツ動作より負荷の小さい日常動作で症状が出るということは、組織が受け止められる負荷の許容量を、すでに下回っている可能性があるということ。とくに安静時の痛みが出ている段階では、セルフケアだけで様子をみ続けるより、医療機関で状態を確認してもらうことを検討したいタイミングといえます。
整形外科を早めに受診すべき症状と検査の流れ
セルフチェックで気になる項目があったなら、次に知りたいのは「どの症状なら受診したほうがよいのか」という点でしょう。
関節の腫れ・熱感・引っかかり感など早期受診のサイン
次のような症状は、関節内部で何らかの変化が起きている可能性を示すため、早めのご相談をお勧めします。
- 関節が腫れてぶよぶよする、押すと張っている(関節内に水が溜まっている状態)
- 患部に熱感がある、赤みを伴う
- 膝の曲げ伸ばしの途中で引っかかる、急に動かせなくなる(ロッキング)
- 力が入らない、膝が抜けるような感覚がある
- 受傷時に音が鳴った、その後急速に腫れてきた
- 安静にしていても痛む、夜間に目が覚める
こうしたサインは、腱や靱帯、半月板といった組織の状態を確認したほうがよい段階を示すことがあります。自己判断で我慢を続けるよりも、まず現状を把握することが、復帰に向けた計画づくりの出発点になります。
エコーやレントゲン、MRI装置を活用した詳細な画像確認
整形外科では、症状の経過や動作をみる診察に加えて、画像検査で内部の状態を確かめていきます。レントゲンは骨の形状や骨折の有無を把握する目的で用いられ、超音波診断装置(エコー検査)は腱や筋、関節周囲の炎症の様子を、その場で動かしながら観察できる点が特徴です。骨だけでなく軟骨・半月板・靱帯といった軟部組織まで詳しく評価したい場合には、MRI検査が選択肢となります。
当院では1.5テスラMRI装置、レントゲン、超音波診断装置、骨密度測定装置(DEXA)を院内に備え、必要と判断した検査を院内で進められる体制を整えています。平日の通院時間が確保しにくい方でも、検査から診察、リハビリテーションの方針決定までを一つの流れでご相談いただけます。 名古屋市名東区のわたなべ整形外科運動器クリニックでは、競技の予定やお仕事の状況も伺いながら、負荷の調整方法を一緒に考えていく診療を心がけています。気になる症状がある段階で、どうぞお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. 運動をすると痛みが薄れるのはなぜですか?
A. 運動によって体温や血流が上がり、交感神経の働きで痛みを感じにくくなることが関係すると考えられています。ただし、痛みが和らいだことと組織の負担が減ったことは別です。運動後や翌朝に痛みが戻る場合は、負荷が過剰になっている可能性も考えて経過を確認してください。
Q. 大会が近いのですが、テーピングで乗り切っても問題ありませんか?
A. テーピングは動作の補助や不安定感の軽減に役立つ場合がありますが、痛みの原因そのものを取り除くものではありません。日常生活でも痛みが出ている状態であれば、続行の可否も含めて一度診察でご相談いただくことをお勧めします。
Q. チームに休みたいと伝えづらいのですが、どう説明すればよいでしょうか。
A. 「痛いから休む」ではなく、「今の段階で調整すれば復帰の見通しを立てやすい」と、期間の目安を添えて伝えると理解を得やすくなります。診察を受けたうえで、続けられる練習内容と控えたい動作を整理してお伝えする方法もあります。
Q. 運動すると頭がガンガンするのはなぜですか?
A. 運動時の血管の拡張や脱水、血圧の変動などが関与する場合があります。急に強い頭痛が生じた、しびれや嘔吐を伴うといった場合は運動を中止し、速やかに医療機関へご相談ください。
Q. 受診した場合、その日のうちに検査まで受けられますか?
A. 症状や混雑状況によって異なりますが、当院ではレントゲンや超音波診断装置(エコー検査)、MRI装置を院内に備えており、必要と判断した検査について院内でご案内できる体制を整えています。事前にお問い合わせいただくとスムーズです。
2000年 富山労災病院 整形外科 医員
2002年 長野県厚生連 長野松代総合病院 整形外科 医員
2003年 愛知医科大学 分子医科学研究所 研究員
2007年 富山大学大学院医学系研究科修了(医学博士)
2009年 黒部市民病院 整形外科 医員
2010年 富山労災病院 整形外科 副部長
2012年 はちや整形外科病院 医局長、関節スポーツ部門担当および人工関節チーフドクター
2014年 豪シドニー臨床留学 (フェロー6ヵ月間)
2018年 名古屋市名東区にてわたなべ整形外科運動器クリニック開院
2021年 医療法人WOMSC設立
医学博士
日本整形外科学会認定
整形外科専門医 リウマチ医
日本リハビリテーション医学会
認定臨床医
日本体育協会 スポーツドクター
【所属学会】
日本整形外科学会
日本人工関節学会
日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)
日本リハビリテーション医学会
日本股関節学会
日本リウマチ学会
東海関節外科研究会 世話人
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